きょうだいの のねずみ


 はたけの なかで、きょうだいの のねずみが ふるえて いますと、とおりかかった いえねずみが、
ふゆの あいだだけ わたしの うちへ おいでなさい。」
と いいました。
「ありがとう ございます。けれど、ねこが いますでしょう。」
と、のねずみが ききました。
「だいじょうぶですよ。いつも こたつに はいって ねむって いますから。」
と、いえねずみは わらいました。
「そんなら ばんに、おひっこしを しますよ。」
と、のねずみと、いえねずみは、やくそくを して わかれました。
「なあ おとうと、なにを おみやげに もって いったら、いい ものだろうな。」
と、あにねずみが いいました。
「どんぐりの みを ひろって いきましょうよ。」
と、おとうとねずみが こたえました。
「なるほど それが いい、おさかなや ごはんを たべあきて いる いえねずみさんには、どんぐりの みが めずらしいだろう。」
と、あにねずみも さんせいしました。

 二ひきの のねずみは、さっそく、どんぐりの の したへ きました。そこには きのう、しょうちゃんと 竹子たけこさんが、おままごとを して あつめた どんぐりが たくさん おちて いました。竹子たけこさんが、
「この 一ぽんのが おにんぎょうよ。」
と いうと、
「四ほんあしのが おうまだよ。」
と、マッチの ぼうを どんぐりに さして、しょうちゃんが いいました。きょうだいの のねずみは おうまや おにんぎょうを みて わらいました。
 その ばんは さむい いい 月夜つきよでした。あたりは ぎんの こなを まいたように、しもが ひかって いました。
 いえねずみは、かきねの ところまで むかえに でて いました。
「さあ、えんりょは いりません。この あなから おかっての たなを つたわって てんじょうへ おあがりなさい。」
と、いえねずみは あんないしました。の ちいさい のねずみが びくびくして いますと、いえねずみは さきに なって、どんぐりを てんじょういたの うえで ころ、ころ、ゴト、ゴト、と ころがしました。
「のねずみさんたちが やって きた、にぎやかに なって いいな。」
と、いえねずみの どもたちは はしゃぎました。
 この とき、こたつに あたって いる おばあさんが、
「また、ねずみが ふえたと みえて やかましいね、とらや、いって ごらんなさい。」
と、おばあさんは とらねこを こたつから おいだしました。
 とらねこは せのびを して あくびを しました。のそのそと おかってへ きて おさらの ごはんを たべると、また、もどって きました。そして おばあさんに むかって、
「べつに かわりが ありません。お正月しょうがつなので、ねずみの ところへも おきゃくが あるのでしょう。」
と いって、ニャオと なきました。



青空文庫より引用